@article{oai:ouj.repo.nii.ac.jp:00007557, author = {河合, 明宣 and Akinobu, KAWAI}, journal = {放送大学研究年報, Journal of the Open University of Japan}, month = {Mar}, note = {ジグミ・センゲ・ワンチュック(Jigme Singye Wangchuck)第4代前国王は、国民総幸福(GNH)という開発理念を掲げ、第2次産業の発展速度を抑えた開発(「近代化」)政策を推進した。1961年に開始された5か年計画が積み上げられ、第9次5か年計画(2002‒7年)が達成された。2008年長期にわたる構想を経て地方自治の規定を含む憲法が発布された。  この憲法発布に至る国づくりの総仕上げとして位置づけられた第9次5か年計画は、第10次以降の5か年計画における産業政策の枠組みを強固にした。第9次5か年計画が達成されたことにより、同計画の4重点領域、すなわち、①経済発展、②文化遺産の保全と振興、③環境の保全と適切な利用、④よい統治をいかに実現するか、が具体化された。②文化遺産と③自然環境の保全の枠組みの中での産業活動の結果として、①経済発展と④よい統治が実現すると位置づけられている。  新憲法では、第3条では、仏教をブータンの精神遺産と定めている。第4条文化では、国家が文化遺産を保護し振興させることを定めている。注目される点は、第5条環境である。後世の人々のために自然や生物資源を守り、自然環境と生物多様性の保全を謳っている。同条3項では、そのために全国土の60%以上を森林として保全せねばならないと述べている。  自然環境保全は、土壌や景観の保全、生物多様性保全、森林保全、文化の保全に直結している。森林保全による膨大な潜在的水資源の水力発電による利用等に直接関連する。豊かな自然と文化は、多くの観光客を引き寄せる。ツーリズムは戦略的産業に育っている。ここで、見落としてはならない点は、森林はブータン国民のアイデンティティの源泉をなすチベット仏教の信仰心に深く関連している点である。  生活と生産の場所を共同する地域住民が自発的にその教義を受容する上で、第1次産業のあり方も含め、自然環境保全の度合と外部の強制から自由であることが決定的に重要である。  これが憲法第5条3項で国土60%以上の面積は永久に森林として保全すると規定した理由である。GNH開発理念を掲げた①経済発展は、基礎となる2つの重点領域達成(②文化遺産と③自然環境の保全)の枠組みの中で達成されねばならない。この点で、GNH開発理念による新しい国家建設は、精神遺産(チベット大乗仏教)の継承と発展にかかっていると言える。}, pages = {29--45}, title = {ブータンのGNH(国民総幸福)開発理念の実現過程─ 森林保全と地方分権化を軸に─}, volume = {29}, year = {2012}, yomi = {カワイ, アキノブ} }